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北欧現地便り

フィンランド住宅博覧会2014の見どころ&注目インテリア

フィンランドの総力が結集される、大規模な住宅博覧会

フィンランドでは、毎年夏にアスント・メッス(Asuntomessut)という、国内のあらゆる住宅メーカーから家具・インテリアメーカーまでの総力が結集される、大規模な住宅博覧会が開催されます。年ごとに開催都市が移動し、その年の展示会場内に建てられた各展示住宅は会期後に施主へと受け渡されるので、会場はやがてそのまま新興住宅エリアに生まれ変わります。

今年2014年の開催都市は、フィンランド中部地方の中核を担う都市ユヴァスキュラ。ユヴァスキュラは、国民的建築家のアルヴァ・アールトが最初の事務所を開いて拠点とした街で、大学キャンパス、劇場、市民プール……と、今日まで利用されている公共施設の多くがアールト建築という、近代的な建築やデザインへの関心がとても高い街。また、街全体が湖畔に開けており、フィンランドらしい景観と機能的な都市とが調和している恵まれた住環境にあります。今回の博覧会会場も、中心街から5キロほど離れた湖岸の一角。会場まではシャトルバスだけでなく、駅近くの港から出航している遊覧ボートでも到着できます。

湖を中心に開けたユヴァスキュラの街
湖を中心に開けたユヴァスキュラの街。真っ青な空と湖面に挟まれた近代的な街並みが美しい
アルヴァ・アールト博物館
ユヴァスキュラにあるアルヴァ・アールト博物館の展示のようす

会場に選ばれ開拓された1800平方メートルほどのアイヤランタ地区には、この博覧会のために計37の戸建て、13階建ての高層マンション、そして幼稚園が新設されました。会期中は、マンション内の数部屋のモデルルームを含め、計43の展示室を見て回ることができるようになっています。また、敷地内ではさまざまな家具やサウナ設備、インテリアデザインの国内メーカーがブースを設けており、住宅の間取りからテーブルセッティングまで、住環境全般の参考デザインを探しながらセンスを磨けます。

さまざまな世代の人たちが訪れる
博覧会会場のようす。子連れのファミリーから老夫婦まで、さまざまな世代の人たちが訪れる
湖畔に建設された13階建ての高層マンション
湖畔に建設された13階建ての高層マンション。上階から臨める湖と市街の眺めは抜群!
マリメッコのコレクションがずらりと並んだショールーム
マリメッコの今秋コレクションがずらりと並んだインテリアショールームも

会場はなかなか広くすべての住宅を見て回るのは大変なので、入口にはおすすめの駆け足4コースが示されています。なかでもユニークなのが、街にゆかりのある「アールトコース」と、会場エリア名にちなんだ「アイヤコース」。
アールトコースでは、アールトの意思を受け継いだ創造的な木材の利用法、採光方法など伝統とモダンの融合が特徴的なモデルハウスを見て回ることができます。いっぽう今回メディアでも噂を呼んでいるアイヤコースは、会場エリアのアイヤンランタ(Äijänranta)が日本流に言えば「漢(かん)の岸」というユニークな地名であることにちなんだ、男らしい男がお一人様で暮らすための戸建てやルームインテリアを紹介した物件をまわるコース!フィンランドでも住居インテリアは女性に選択権が委ねられた家庭が多いですが、あえてイカした男目線で提唱されたインテリアセンスという発想は斬新で、殿方を中心に注目が集まっています。

アールトからインスピレーションを得たというモデルハウス
アールトの独特な空間表現や採光手法からインスピレーションを得たというモデルハウス
イカした男のクールな一人部屋を想定したインテリア
イカした男のクールな一人部屋を想定したインテリアを提案する部屋

さて、展示ひとつひとつはとても紹介しきれないので、筆者がすべての展示ルームを鑑賞し終えて実感した、近年のフィンランド住宅の傾向といえる特徴的なポイントを何点かご紹介したいと思います。

開放感と家族の連帯感を重視し、廊下や壁を取り払った団らん空間中心の日常

フィンランドでは昔から、決して広くない住居を少しでも広々と多目的に使えるように、トゥパケイッティオ(Tupakeittiö)という、キッチンスペースを中心に食卓や家族団らんの場、手工芸などの作業場をひとつにした台所兼居間が、住居の中心として機能していました。そのアイデアは今日の住環境にもそのまま受け継がれているようで、今回見たモデルルームのほとんどが、キッチンスペース、食卓、ソファやテレビの置かれたリビングスペースまでが隔てなくひとつづきになった、開放的な共有空間をメインにした間取りでした。
また、このトゥパケイッティオ部分を吹き抜けにした住宅も目立ちます。各個人の部屋やシャワールームもそこから直通しているので、廊下を省くことができ、常に互いの顔や出入りを把握しあうことが可能になります。
夫や子供がキッチンに立つのも当たり前のフィンランド。家族が常に顔を見合いながら、できるだけ長い時間一緒にくつろいだり共同作業ができることは、会話の弾む楽しいファミリーライフスタイルの基本なのでしょう。

キッチンから食卓、リビングまでがひとつづきになった間取りの例
家族団らんの場所が融合し、キッチンから食卓、リビングまでがひとつづきになった間取りの例。
家族と向き合うことのできるキッチンスペース
炒めものの間もお母さんがお尻を向けずに家族と向き合うことのできるキッチンスペース
壁を部分的にガラスにして室内の閉塞感を減らす工夫
階段の手すり壁や2階の壁を部分的にガラスにして室内の閉塞感を減らす工夫もよく見られた
共有スペースが吹き抜けになっていると、さらに開放感アップ
共有スペースが吹き抜けになっていると、さらに開放感アップ

窓はとにかく大きく、たくさん。採光がフィンランド住宅の最重要課題

とりわけ冬場は日照時間が短く、家に差し込む光も弱々しい風土柄、今も昔もフィンランドの住宅において採光は最も大きな課題です。最近はどこの住宅メーカーもこぞって、いかに耐久性と断熱性と窓の面積拡大を両立するか……という挑戦の成果をモデルルームで発表しており、窓面積は年々拡大傾向に。とりわけリビングスペースは、接する壁のほとんどがガラス窓、というまるでテラスのような自然光たっぷりの空間が目立ちました。また、近所や通りがかりの人の目を気にせず、食事やくつろぎ中も堂々とカーテンを開け放していられるようにと、あえてキッチンやメインリビングを2階にもってきた家もありました。
ここまで窓面積が多いと、カーテンの開け閉めや掃除、紫外線対策はどうするのだろうという疑問も浮かびますが、それでもとにかく少しでも多くの自然光のなかで明るく開放的な暮らしがしたい、というフィンランド人の飽くなき欲求が反映されているに違いありません。

窓面積を可能な限りたくさんとってある採光重視のモデルハウス
見るからに、窓面積を可能な限りたくさんとってある採光重視のモデルハウス
リビングにたっぷりと光が注ぐ
リビングにたっぷりと光が注ぎ、自然光のなかで暮らせるとと居心地もよい
勉強部屋や寝室にも大きなスリット窓を多様して
勉強部屋や寝室にも大きなスリット窓を多様して
季節や時間帯によって可視性をコントロール
カーテンやブラインダーを適宜利用して、季節や時間帯によって可視性をコントロールする

伝統的なサウナにも、モダンなエッセンスを採り入れて

平均で週に2〜3回は自宅でサウナに入るというフィンランド人にとって、戸建てでもマンションでもマイ・サウナは欠かせない一室です。サウナは、焼け石に水をかけるという伝統的なスタイルや、室内が高温になることから木造ベンチや床しか敷けないという材質の制約から、空間的にあまり大きな変化を遂げてくることはありませんでした。けれど近年はやはりサウナ部屋にも、モダンなエッセンスを採り入れた新構造やインテリアが次々に提案されているようです。
なかでも革新性が際立っていたのは、ベンチやもたれる壁に曲げ加工をした合板を使っていたサウナ空間。まるでソファに座っているような肌触りの良さとともにリラックスできそうです。それから、従来は容量のあるストーブにたくさん石を敷き詰めていたサウナストーブも、昨今はスペースをとらない低層タイプのものが開発されており、あまり面積をとれない自宅サウナを少しでも広々と使えるよう工夫が見受けられます。

なめらかな合板でベンチや壁の作られた、すわり心地の良いデザインサウナ
なめらかな合板でベンチや壁の作られた、すわり心地の良いデザインサウナ
小型で、空間を広々と使えるサウナストーブ
従来のサウナストーブと比べてずっと小型で、空間を広々と使えるサウナストーブ

外観のトレンドカラーは白と黒。外壁材にはやっぱり木が人気

外壁については、従来の人気カラー白はもちろんのこと、一見重量感が強調されてしまうブラックやセピアなどのダークカラーがかなり多いように感じました。住宅メーカーの話では、これは個々人の好みの傾向というよりは、外壁の色指定をおこなう市の街景観プランニング上のトレンドとのこと。フィンランドでは、都市部の多くのエリアで街が外壁の指定色を言い渡すことが多いのです。ただし、先述したようにモダンハウスはとにかく窓面積が多く、その配置も律動的なので、マッシブなイメージは軽減されていますね。
また、外壁材としては今日でもやはり木材が圧倒的に人気。フィンランドは住宅街といえどもすぐそばには森や湖といった自然景観に恵まれているので、国産の木材を使った外壁は当然景観にも馴染みやすく、自国の誇りを感じられるタイムレスな素材なのでしょう。

トレンドに合わせて作られたダークな壁の住宅
近年の街ごとの外観指定色のトレンドに合わせて作られたダークな壁の住宅
周囲の景観にも馴染みやすい木造住宅は不動の人気
温かみがあり周囲の景観にも馴染みやすい木造住宅は不動の人気

最後に、モデルルームのなかで見かけて気になったインテリア・家具を4点ご紹介します。

Secto Design社のダイニングランプOwalo 7000

国産白樺材から作られた合板を、職人の手仕事で曲げ加工して作られているセクト・デザインのランプシェードは、木の温かみが言わずもがな北欧住宅との相性抜群。LEDランプによって十分に照度も確保してくれます。食卓をくまなく照らすのにぴったりなオヴァロシリーズの存在感が特に印象的でした。

ナチュラル色の白樺合板を繊細にあしらったランプシェード
ナチュラル色の白樺合板を繊細にあしらったランプシェードは食卓に優しい雰囲気を与える

VM-CarpetのデザインマットJänö

フィンランドのマット・カーペット大手メーカー、ヴェー・アム・カーペットが、通常のマットに波や葉っぱなどさまざまなワンポイント模様を施すユニークな追加デザインシリーズ。Jänöはフィンランド人なら誰もがあっと気づいて顔をほころばせる、冬の白い雪原のそこらじゅうでみられる野ウサギの足跡バージョン。まるで室内をウサギが突っ切って駆けていったかのような、遊び心が楽しいカーペットです。

野ウサギの足跡がカーペットにまで!
雪に覆われた冬のフィンランドでそこここに見られる野ウサギの足跡がカーペットにまで!

子供部屋に人気のテント型の遊び場

子供部屋のモデルルームで何度か見かけたのが、小さなテントの形をしたアイテム。ちょっとした隠れ家や遊び場として、いかにも子どもたちが喜びそうな一角ですね。なかにはマリメッコのテキスタイルで作られた色とりどりのデザインテントもあって、子供部屋らしい元気よさを演出していました。

マリメッコのテキスタイルが張られたカラフルテント
部屋で小さな冒険気分に?こちらはマリメッコのテキスタイルが張られたカラフルテント

Nunnauuniの近未来型暖炉ストーブ

フィンランド家庭のリビングには暖炉も不可欠なアイテム。従来の型にこだわらない挑戦的なデザインの暖炉ストーブを生み出しているヌンナウーニ社からは、男性一人住まいの部屋に置いても部屋のスタイリッシュなイメージを損ねない、斬新なデザインストーブが提案されていました。まるで宇宙船のような唐突な形だけれど、なめらかな流線がどこか愛嬌があって個性を主張しすぎない、不思議な親和性をもった暖炉です。

まるで宇宙船のようなスタイリッシュな暖炉ストーブ
まるで宇宙船のようなスタイリッシュな暖炉ストーブ

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