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ムーミンカップのデザイナーにインタビュー(後編)。商品の人気の秘密と、仕事場を公開!

この仕事場でムーミンのマグカップに命が吹き込まれる Photo: Markku Toikkanen

インタビューの前編はこちらから

自宅での仕事の様子をおしえてください。

1985~1993年は、アラビア社のスタジオで働いていたけれど、1994年からは自宅で仕事をするようになったの。最初は小さな仕事場だったのだけれど、家を改築した時にやっと大きな空間にすることができたわ。これまでのたくさんのサンプルは地下に眠っているのよ。

トーベさんのお仕事をムーミンが見守ります Photo: Tove Slotte

普段はどんな生活を?

家では3匹の犬を飼っていて、一緒に外へと散歩によく行くわ。すぐ近くにある森林や、湖のある草原を歩くことが大好きなのよ。夏はテラスに座って、太陽の光を浴びるわ。もちろん、ムーミンのマグカップと一緒にね!

今はあまりカフェに行ったりはしないけれど、ヘルシンキで仕事をしていた時はたくさんのコーヒーショップを訪れたわ。海外旅行の楽しみといえば、ギャラリー、ミュージアム、カフェめぐり。

デザインのインスピレーションはどこから得るのですか?

アラビアのプロダクト・マネージャーが、どのような商品が欲しいかをまずは伝えてくれます。その後は原作のページをめくりながら、刺激を得ます。この25年間、もう本には何度も目を通しているから、どのページにどの絵が掲載されているかは記憶しているんだけれどね。でも、いつも新しい発見があるわ。夢からインスピレーションを得ることもるのよ!

トーベさんは夢からも新しいアイデアのヒントを掴む Photo: Tove Slotte

仕事の途中で、頭を一度レフレッシュさせたい時にすることは?

新しいプロジェクトの時は、興奮していることが多いので、アイデアの創出はそこまで苦ではないの。それでも、作業の途中で疲れを感じることもあるわ。特にムーミンの登場人物たちの絵を大幅に変更する必要がでて、私の頭がついてこれなくなった時にはね。そのときは、休憩をとるの。

気分転換のために家から出て、別の場所に行ってみることもあるわ。家でコーヒーブレイクをとる時の私のパートナーは、自宅で仕事をしている夫か、新聞紙よ。

ムーミンのマグカップのデザインにかかりっきりになっている時は、本気で頭を休憩させる必要があるわ。その時は、コーヒーを飲む時でも、ムーミン以外のマグカップを使うの。

この数年で、ムーミンのマグカップにはどのような変化が?

この25年間でも、デザインの変化は目にとうようにわかるでしょう。当時は色のパターンも少なく、アウトラインに使われていたブラックカラーはもっとソフトなものでした。当初は、いまでいう「キャラクター・マグ」もなかったわ。

キャラクターが前面にでてきた人気のマグカップは1999年からで、いまでは25種類あるわね(3月には27種類になるわよ)。

発売当時は、絵の背景に「景色」が描かれることもなかったわ。今は夏や冬をテーマにした季節限定のマグカップがでていて、景色が描かれているのが当たり前になったわね。

私はデザインするときに、世間でそのとき何が流行っているかを意識することはありません。それでも、マグカップは制作当時の時代背景を、なにかしら反映しているように思えます。

Photo: Markku Toikkanen

最も人気のあるマグカップといえば?

ピンク色の「LOVE」をテーマにしたものでしょうね。ムーミンと彼女のフローレンが抱き合っているデザインです。1996年の販売開始以降、今でも続く大ヒット商品。始めて購入したマグカップが、この「LOVE」だったという人にも出会ったことがあります。

ご自宅にムーミンのマグカップは何個ありますか?

たくさんありすぎて、数えることができないわ! プロトタイプや複製もあるのよ。仕事机、棚、キッチン、地下室、至る所にカップはあるわ。

自宅の隅々にマグカップが隠れている Photo: Tove Slotte

トーベさんのお気に入りのマグカップは?

2005年に出た白黒カラーの「Moomintroll Daydreaming」は長年のお気に入りだったわ。オレンジカラーのニョロニョロのカップや、「Adventure-Move」も好きね。

お気に入りのニョロニョロのマグカップ Photo: Tove Slotte

マグカップはどうして特別なプロダクトになったのでしょう?

アラビアからは他にもたくさんの種類のテーブルウェアがでていますが、その中でもマグカップは特別に人気があります。使い勝手もいいし、贈り物としても便利だからでしょう。棚に飾ったときに、モチーフが見やすいという点もあります。プレートは壁にかけたりしないと、絵が鑑賞できませんからね。

多くのフィンランドの家庭には、ムーミン関連の商品があります。90年代に子どもだった人にとっては、今みると懐かしさを感じるデザインもあるでしょう。

フィンランドではムーミンはどれほど人気があるのでしょうか。

ムーミンは非常に人気があります。ムーミンを知らない人はまずいないでしょうね。子どもはアニメや本が好きで、成長するとマグカップが好きになることも。マグカップを収集しているのは、特に若い大人の女性ね。

ムーミンが好きな理由は人によって異なりますが、あの世界観が鍵なのでしょう。登場人物たちは、おかしなアイデアを思いつき、他者に寛容で、相手を受け入れます。冒険が好きだけれど、同時に、安全な谷と、居心地のいい家に戻ってきます。

トーベ・ヤンソンは、おかしな格好の生き物たちであふれた社会を創り上げました。キャラクターたちは個性にあふれ、誰もが自分のお気に入りを見つけることができます。自分に似ているキャラクターを見つけることもできるでしょう。

本は哲学書にもなるし、おとぎ話にもなります。子どもと大人、みんなのための物語なのです。

Photo: Markku Toikkanen

来日されたことはありますか?

日本はまだ訪れたことがないの!でもフィンランドでは、ムーミンや私を訪れに来た、たくさんの日本人の方々に出会いました。日本は気になる国だから、いつか旅行してみたい。日本の人は、ムーミンのことを本当によく知っていますね。東京にあるムーミンカフェにも行ってみたいわ!

ムーミン以外で取り組んでいる作品はありますか。今後の目標は?

もうずっとムーミンにばかり従事しているけれど、裏庭に焼き物をする仕事場があるの。時間に余裕ができたら、将来は焼き物にも集中したいわ。食器のほかにアクセサリーも作製できるのよ。近くのスクールで、セラミックの授業を教えたこともあるわ。

これからやってみたいことについては、いくつかアイデアがあるの。でも、それはもうちょっとの間、秘密にしておくわ。

ムーミン以外の作品をちょっとだけ公開 Photo: Tove Slotte

彼女の丁寧な人柄と、ムーミンとの運命のつながりが、随所に現れた今回のインタビュー。記事を読み終えて、マグカップにさらに愛着が沸いたとう方が一人でも増えてくれれば嬉しいなと思います。

 

TEXT : 鐙 麻樹 

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