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新人デザイナーのサバイバル術とは?ノルウェーの若手デザイン集団Klubbenと対談

オスロ中心地にあるKlubbenのオフィスにはメンバーたちの力作が並ぶ Photo:Asaki Abumi

ノルウェーの「今」のデザイン界では、なにが起こっているのだろうか?春の訪れが感じられはじめた4月上旬、首都オスロの中心地にあるKlubbenのオフィスを訪ねた。

出迎えてくれたのは、2人のノルウェー人デザイナー、クリスティーネ・ビョーダルさんとルーナ・クロックさん。古びたビルの2階のドアの向こうには、モダンで居心地のいいお洒落な家具が詰まったオフィスが広がっていた。この環境でなら、のびのびと作業をし、仲間たちと刺激ある会話をしながら、新しい創作アイデアが浮かぶことだろうと想像できる。


ビョーダルさん(右)とクロックさん(左) Photo:Asaki Abumi

ノルウェーの新進気鋭のデザイナーたちの溜まり場

コーヒーとパンを食べながら、私達の対談は始まった。まずはKlubbenという団体について。「クルッベン」は2011年に創立された若手デザイナーが集まるクリエイティブな集団だ。英語で表現すると、ノルウェーウェジアン・デザイナーズ・ユニオン。

若手が共同作業できる場所を!

創設者はヴィクトリア・グンズリー、サラ・ポルマール、スヴェレ・ウングールの3人のノルウェー人。「若手デザイナーが共同作業できる場所がノルウェーにない」ことに気づいたことが発足のきっかけだ。現在は31人のノルウェー国籍を中心としたデザイナーが加盟しており、そのうちの4人は外国に在住している。

世界中のデザインブックや、メンバーのプロトタイプがあちらこちらに置かれている。左の写真のソファはスヴェレ・ウングール作、ブランケットはクロックさんがロロス社のためにデザイン Photo:Asaki Abumi

デザイナー達はそれぞれが独立して起業しており、ネットワークや商品発表を広めるチャンスの場として、Klubbenにメンバー加入している。展示会でプロトタイプを披露し、メディアに取り上げてもらい、バイヤーや起業の目にとまり、業務委託につなげることが目的だ。メンバーとなるための厳しい条件はないが、全員がボランティア精神で集まっているいるので、活動に参加できない場合は、加入が途中で取り消されることも。

「一人で奮闘するよりも、みんなで協力しあったほうが、新しいアイデアも生まれるし、チャンスの幅が大きく広がります」と語るクロックさん。「国際展示場などで、よくノルウェー国外の方々から驚かれるのが、私達のこの働き方です。ライバル同士なのに、協力し合ってグループで動いている光景は、他国の方々からみると不思議なようですね」。


ビョーダルさんは手書きでデッサンを描く Photo:Asaki Abumi

Klubbenは、これまでにノルウェー国内外で10回以上の展示を開催。2014年11月には、東京で開催された国際見本市IFFT/インテリア ライフスタイル リビングにも参加。ノルウェー発のカフェ「フグレン・トウキョウ」の別部隊である「ノルウェージャンアイコンズ」と共に商品を展示した。ビョーダルさんとクロックさんも東京に駆けつけ、自身のプロダクトをアピール。

ビョルダールさんは、日本でも知名度の高いカフェ「フグレン」のために、現在オリジナルのコーヒーカップ「Svale」をデザイン。オスロの店頭でお目にかかれる日は近い? Klubbenのオフィスは古い建物の2階にある Photo:Asaki Abumi

デザイナーになるためには「大学院」レベルの学歴を

ノルウェーでデザイナーはどのようなプロセスで社会に飛びたつのだろうか。「大学院を出て、修士号を取得しているのは当たり前」と、オスロ国立芸術アカデミー大学院でデザイン学を共に学んだ2人は口を揃える。

個人事業者がほとんど。孤独なスタート?

ノルウェー国内にはデザイン関連の学業を学べる高等教育機関はたった4か所しかないため、大学のレベルには大差がない。日本とは異なり、在籍中に就職活動をする学生は稀だ。「インターンシップのような制度は珍しく、学生がデザイナーとして大企業に就職できることはあまりありません。卒業後は、個人で独立して起業している人が多いですね」とビョーダルさん。

「学生がすぐに一人で独立というのは、孤独なスタートではないですか?」と思わず聞いてみた。「確かにそうね。ひとりぼっちでのスタートだわ!だから、Klubbenのような場所が必要なのかもしれない」とビョーダルさん。「起業するからには、経営や経済の知識も本当は必要。私達が学生だった頃はそれが十分ではありませんでしたが、大学は今ビジネスの教育に力を入れ始めているはず」とクロックさんは付け加える。どうやら、ノルウェーでは新人デザイナーたちの前に立ちふさがる壁は大きいようだ。新人をサポートするシステムがさらに充実すれば、ノルウェーのデザイン産業には活気がもっと溢れるのではないか、そんな印象を受けた。


手書きのデッサンの紙やペンで溢れたビョーダルさんのデスクとは対照的に、クロックさんの仕事場ではパソコンが主役で、シンプル Photo:Asaki Abumi

現在、Klubbenのオフィスでは7人が個室をもち、皆が中央のリビングを中心に自由に集まりあう。意見交換をし、互いにインスピレーションを与え合い、イベントでは一丸となってチーム力を発揮。Klubbenオリジナルのプロダクトがあるわけではなく、デザイナーたちのプロトタイプを「Klubben」というショーウィンドウを通して、国内外に発信していくのが主な活動だ。

「“ノルウェーデザイン”への好奇心は今、国際市場で熱くなってきていると感じます。“デンマークやスウェーデンのトレンド動向は追えるけど、ノルウェーでは今何が起こっているの?”、“なにか新しいものが隠れていそう”と、興味を持つ人々が多いのです。私達はデザイナー人数が多い分、提供できるカタログの数も多い。それがKlubbenのノルウェーブランドとしての強みです」とビョーダルさんは語る。


ビョーダルさんの作品「Siska Slow. Coffee Collection」。特にフレンチプレスのかっこいいデザインに筆者は目を奪われた。欲しい! Photo:Asaki Abumi

インタビューの当日は、Klubbenチームが国際家具見本市ミラノサローネへと旅立つ前日でもあった。インタビュー中は、ほかのメンバーがドタバタと展示の準備にも追われていた。ミラノサローネでの展示は、メンバーたちの夢でもあったという。「ノルウェージャンアイコンズを含め、今回は最強のメンバーがタッグを組んで展示をします。とてもわくわくしているわ!」と2人は目をキラキラと輝かせた。

Klubbenには、北欧ブランド「HAY」に匹敵しそうな、力強いエネルギーと可能性が満ち溢れている。今後の活躍が楽しみだ。

クルッベン(Klubben)

http://klbbn.no/

TEXT : 鐙 麻樹 

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