ハウジング

本場北欧ハウスお宅拝見

トゥイヤさん& アルトさん

学校教育アドバイザー &中学養護教諭/ユヴァスキュラ在住

共にベテラン教員のアルトさんとトゥイヤさんカップルは、生粋のアールトデザインファン。アールトの木製家具や照明が、違和感なく溶け込んだ、のどかな住宅街にある緑樹に囲まれた邸宅です。 共にベテラン教員のアルトさんとトゥイヤさんカップルは、世界的建築家アルヴァ・アールトの公共建築が数多く残る街ユヴァスキュラで生まれ育っただけあり、生粋のアールトデザインファン。のどかな住宅街にある緑樹に囲まれた邸宅をうかがうと、今日でも決して古びた感じを受けないアールトの木製家具や照明が、モダンな日常生活に違和感なく溶け込んでいました。

外観

まるで果樹園のような緑の庭が美しい
築60年の木造セミデタッチド・ハウス

お二人が暮らすのは、中部フィンランドの中核を担う都市ユヴァスキュラの、1950年代に宅地開発が進められたマッティランペルト地区。世界中から建築好きが詰めかけるアルヴァ・アールト博物館も目と鼻の先です。このエリアは悠々とした車道と歩道を立派な街路樹が分け隔てており、子供がのびのび走り回れる緑地公園が点在。さらに個々のお宅には、一世帯には十分すぎるくらいの広いお庭が設けられている閑静な一等地です。

トゥイヤさんらが緑に包まれる住環境に魅せられてこの土地に越してきたのは1995年のこと。広大な庭を抜きにして約110平米の、趣きあるワイドな木造館は、2家族が壁を隔てて左右に別居しているセミデタッチド・ハウスになっています。かつてセミデタッチド・ハウスでは、地下に家主さんの住居があり1階2階が賃貸物件になっているのが一般的でしたが、今日では地階から2階までを一家で所有し暮らしています。

キッチン・ダイニング

光の白色×木材のバーチ色×活きた緑色
アールト建築をお手本にした、自然と折り合うダイニング

トゥイヤさんらのアールト愛がわかりやすくにじみ出ているのが、家族そろって過ごす時間が一番長いキッチン・ダイニング。越してくる前からたまたまあったという、白いキッチン収納棚をうねるように縁取る木製の取っ手を見て、なんともアールトデザインに通じたディテール!とピンときたのだそう。その後の内装リノベーションでもこの棚のデザインだけはインテリアのエッセンスとしてそのまま残し、アールトが手がけたアルテック社の椅子とダイニングテーブルを配置。白壁を伝って室内に拡がる自然光と木のぬくもりに満ちた、フィンランド人にとってのタイムレスな快適空間を目指したのだそうです。

窓枠の向こうにのぞく庭の緑樹

窓の外の自然風景を
インテリアの一部のように

このダイニングのもうひとつの大切な構成要素が、窓枠の向こうにのぞく庭の緑樹。もちろん冬場は葉を落としてしまいますが、今の季節はこの最高の自然のテキスタイルが窓先を覆ってくれているので、ブラインドだけを設置して、あえてカーテンはつけていないのだとか。窓の外の自然風景をインテリアの一部のように室内に取り込み、住居空間と調和させる手法も、やっぱり不朽のアールト建築がお手本になっています。

リビングスペース

家具はナチュラル色を選んで空間を広く見せ
雑貨や装いの存在感を引き立たせる

キッチン・ダイニングからひとつづきの空間になっていて、カーテンレールでの間仕切りも可能なリビングスペース。ここでは大型ソファの色を壁紙の色に同調させることで家具の主張を抑え、空間を広く見せています。ご自慢のアルテックアームチェアや大胆な柄ものクッションも際立って見えますね。

それに家族みんなでシェアするリビングルームでは、家族写真や思い出の品、書物といった生活感あふれるアイテムが増えていくのは自然なこと。空間自体をすっきりとした色やデザインにまとめておけば、物が増えても雑然とした印象を抑えてくれます。一家にはマリメッコなどのビタミンカラー・ファッションを好む娘さんたちがいるので、住居空間の色みが落ち着いていると彼女たちの装いも映えるのだとか。 リビングに限らず全部屋を通して、北欧デザインと聞いて我々が思い浮かべるような主張の強い色味の家具をあえて置かず、家族の賑やかな日常生活の下地となるようなナチュラル空間を保つのがポリシーのようです。

また、見ての通りリビングでも自然界の光・木目・緑は大事な要素。大きな2面の窓には透過性のある白いカーテンをかけて、自然光をたっぷりと室内に拡散できるよう工夫しています。

ゲストルーム

屋根下の勾配スペースを活用した
暖かな暖炉のある憩いの空間

トゥイヤさんたちの一家は、死別された前夫さんとの間のお子さんも含めて、子宝に恵まれた大所帯。歳上の子どもたちは徐々に自立して親元を離れており、その都度増えていく2階の空き部屋は、おもにゲストルームとして活用されています。各子ども部屋につながっている屋根下の急勾配スペースには、ノルウェー製の簡易暖炉とソファ、子どもたちのゲーム用テレビが収まったコージーな空間が。昼間はランプをつけなくとも小さな窓からそっと差し込む自然光だけで十分にくつろげます。ちょっとした時間に暖かな火を囲んでお喋りやコーヒー休憩のできる、狭いスペースをポジティブに活かした家族の隠れ家のような一角です。

サウナ部屋

レンガと木の混合スタイルが新鮮な
フィンランド人家庭に欠かせないサウナ部屋

日本の浴室のように、フィンランド人の家庭にはごく一般的にあるサウナ部屋。トゥイヤさんらのお宅の場合、普段利用するシャワー室とは別に、地下に広々と設けてあります。週に2回はサウナを温めるのが習慣とのこと。サウナ部屋の壁やベンチは今も昔も木造が主流なのですが、このお宅のサウナ室は床だけが珍しいレンガ造り。そういえばアールトも、木とレンガという2種のマテリアルを美しく見せる建築にこだわっていましたっけ。サウナ部屋の片隅には電気式のサウナストーブがあり、その上部に敷き詰められた石に柄杓で水をかけて、蒸気を出し温めます。奥に見えているのは、ヴィヒタと呼ばれる白樺の葉束。これで身体をバシバシ叩くと、天然の香りが充満してよりいっそうリラックスできるのです。

トゥイヤさん& アルトさんのお気に入りアイテム5選

アルテックのダイニングテーブルと椅子

アルテックのダイニングテーブルと椅子

アールトがデザインした不朽の名作シリーズの、木製テーブルと椅子。自然素材の温もりが食卓に落ち着きを与えてくれます。背もたれ椅子のいくつかはトゥイヤさんが実家から引き継いだ古い愛用品で、家族が増えるたび買い足していったのだそう。

イーッタラのフィンランディアベース

イーッタラのフィンランディアベース

アールトがデザインしたことでお馴染みの多目的花瓶、アールトベースをより背高にしたフィンランディアベースは、本数の少ない花束をすっきりエレガントに飾るのにぴったりの高さ。建築だけでなく、家具から食器までトータルデザインにこだわっていたアールトの作品だけに、このお宅のインテリアにはとくに馴染んで見えます。 

マリメッコの巨大ファブリックパネル

マリメッコの巨大ファブリックパネル

かつて飼っていた猫が壁に大きな引っかき傷をつけてしまったので、隠すついでに大きな作品を飾りたいと思い立って選んだという、マリメッコの人気パターン「イルタヴィッリ(夜のワイルド)」。白い壁と調和しつつも、ダイニングで圧倒的な存在感を放っています。特大パネルはマリメッコに特注で作ってもらったのだとか。

1950年代のアンティク・ネストテーブル

1950年代のアンティク・ネストテーブル

ソファーテーブルとして自在に組み合わせながら利用している入れ子式の木製テーブル。デザイナーは不明だけれど、家屋と同じ1950年代に作られたアンティークだそうで、華奢な脚とアールト家具に馴染む木目調がお気に入り。

庭のピクニックテーブルと簡易ビニルハウス

庭のピクニックテーブルと簡易ビニルハウス

リンゴやチェリーなどの果樹や古い白樺の木が鬱蒼と葉を揺らす、羨ましいほどに広大なお庭で過ごす時間を大切にしているトゥイヤさんたち。ピクニックベンチは、天気の良い日のティータイムやガーデンパーティなどに活用。お庭の一角では熱心に野菜やハーブの栽培をしていて、ビニルハウスはフィンランドの寒冷気候に適さない植物を育てるときには不可欠なのだそうです。

TEXT : こばやしあやな

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