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アナ雪の映画スタッフが影響を受けた3つのノルウェーデザインとは?

アナ雪の作品中で何度も登場する伝統的なローズマリング柄と伝統衣装 Photo: Asaki Abumi

世界各国で大ヒットを記録した映画『アナと雪の女王』。映画製作スタッフは、映像世界のインスピレーションを求めて、北欧にある雪国ノルウェーを訪れました。映画を見ていると、あちらこちらにノルウェーの自然風景、食文化、建築様式が反映されています。大自然のフィヨルド、オーロラ、雪に覆われた銀世界は、まさにノルウェーの世界そのもの。「アナ雪の世界観を体験したい!」と、ノルウェーの観光客も増加中です。

ノルウェーに視察に訪れた、アナ雪のヴィジュアルデヴェロップメントチームとアート・ディレクターであるMichael Giaimo氏は、自然風景だけではなく、デザインと建築からも大きな影響を受けました。

今回はその中から、3つのノルウェーデザインを選りすぐってご紹介します。写真の中のテキスタイルやモチーフをじっくり観察してから、もう一度映画を見てみてみると、アナ雪とノルウェーのつながりを発見することができるかもしれません。

フォークアート、「ローズマリング」

アナとエルサの洋服、クリストフの乗るソリ、教会やお城の部屋の中のインテリアなど、至る所で「ローズマリング」というノルウェーのフォークアートの柄を見つけることができます。ローズマリングは、バラを中心とした「花」模様と、花の周囲を流れるように囲む「葉」模様が特徴的です。カラフルな色使いで、主に木製品に描かれています。

花と葉の模様が美しく描かれたフォークアート Photo: Asaki Abumi
花と葉の模様が美しく描かれたフォークアート Photo: Asaki Abumi
花と葉の模様が美しく描かれたフォークアート Photo: Asaki Abumi

フォークアートは、ヨーロッパの新しいトレンドとノルウェーの昔からの伝統が混ざり合って進化し続けてきました。1700~1800年代前半は、ロココ、ルネッサンス、バロックの様式から影響を受けて、フォークアート文化が花開いた時代です。主に木製の箪笥や道具箱、食器として使用されていたボウルやお玉など、様々な生活用品や建築物にローズマリングも描かれました。

アナとエルサの衣装の模様をじっくり見てみると、ローズマリングとブーナッドがみてとれる。木箱に描かれている白馬の王子様は、ハンスにそっくり!? Photo: Asaki Abumi
アナとエルサの衣装の模様をじっくり見てみると、ローズマリングとブーナッドがみてとれる。木箱に描かれている白馬の王子様は、ハンスにそっくり!? Photo: Asaki Abumi
アナとエルサの衣装の模様をじっくり見てみると、ローズマリングとブーナッドがみてとれる。木箱に描かれている白馬の王子様は、ハンスにそっくり!? Photo: Asaki Abumi

今でも国内各地で開催されている蚤の市やヴィンテージショップでは、ローズマリングが描かれた木製の家庭用品などを見かけます。ローズマリングは、個性的で複雑なパターン、色使いも強い模様。そのため、アナ雪の映画製作スタッフは、キャラクターの個性が負けないように、ローズマリングが作品の中でよりニュートラルに機能するように、デザインをアナ雪風に再構成しています。

クリストフのソリにそっくりなソリもかつては実際に使用されていました。刺繍にもローズマリングの影響がでています。アナとエルサのドレスの隅々にぜひ着目してみてください。 Photo: Asaki Abumi
クリストフのソリにそっくりなソリもかつては実際に使用されていました。刺繍にもローズマリングの影響がでています。アナとエルサのドレスの隅々にぜひ着目してみてください。 Photo: Asaki Abumi
クリストフのソリにそっくりなソリもかつては実際に使用されていました。刺繍にもローズマリングの影響がでています。アナとエルサのドレスの隅々にぜひ着目してみてください。 Photo: Asaki Abumi

民族衣装「ブーナッド」

デザイン性抜群! 細かいディテールが美しい民族衣装 Photo: Asaki Abumi
デザイン性抜群! 細かいディテールが美しい民族衣装 Photo: Asaki Abumi
デザイン性抜群! 細かいディテールが美しい民族衣装 Photo: Asaki Abumi

アナとエルサのコスチュームには、民族衣装ブーナッドとローズマリング模様が色濃く反映されています。ブーナッドは今でもノルウェー各地で使用されており、手編みの衣装は地域によって模様が異なります。細かい刺繍、様々な形状の紐、ゴールドやシルバーのアクセサリー、カラフルな色使いがポイント。結婚式や5月17日の憲法記念日の日など、お祝い事のある日に今でも多くの国民がブーナッドを着用します。

アナ雪の製作開始当時には、映画スタッフはロシアから影響を受けたコスチュームデザインを想定していましたが、ノルウェーの世界観へと方向性が傾くにつれ、次第にブーナッドからのインスピレーションが盛り込まれるようになりました。ちなみに、ハンスの衣装は男性版ブーナッド、クリストフの衣装は先住民族サーミ人の衣装が大きく影響しています。

祖母から母、娘へと次の世代へと託される民族衣装。男性の衣装も素敵! Photo:Asaki Abumi
祖母から母、娘へと次の世代へと託される民族衣装。男性の衣装も素敵! Photo:Asaki Abumi
祖母から母、娘へと次の世代へと託される民族衣装。男性の衣装も素敵! Photo:Asaki Abumi

雪国ノルウェーでは保温性の高いウール素材が愛用されており、それはアナ雪の登場人物の制服にも使用されています。じっくりと見なければ分からない細かなディテールですが、製作スタッフの徹底的なこだわりには驚くばかりです。

お城のモデルとなったスターヴ教会

Credits:  Øyvind Heen - Visitnorway.com
Credits:  Øyvind Heen - Visitnorway.com
Credits:  Finn Loftesnes - Visitnorway.com
Credits:  Finn Loftesnes - Visitnorway.com
荘厳でユニークなボルグルンド・スターブ教会。アナ雪の舞台では色がつけられ、さらにゴージャスに!

アナとエルサが住むフィヨルドに囲まれた魅惑的なお城や、アレンデール王国の建築風景は、中世時代から伝わる古い木造のスターヴ教会がモデルとなっています。ヨーロッパ他国では石造りの教会が建てられていた一方、ヴァイキング時代から伝わる木工技術、伝統的なアート、キリスト教の文化が混ざりあい、ノルウェーでは独特な木造教会が作られました。

「ドラゴン・スタイル」と呼ばれる屋根の上の竜頭や、ウロコの形状の屋根、窓や柱の細かいディテールなど、教会の装飾「チャーチ・アート」は、中世当時の芸術と各地の職人たちにも大きな影響を与えました。

1000棟以上あったとされるスターブ教会も、今は28棟しか現存していません。最も有名なのはユネスコの文化遺産に登録されている「ウルネスのスターブ教会」。アナ雪の製作スタッフは、ノルウェーのラールダル市にあるボルグルンド・スターブ教会を視察しています。

Credits:  Finn Loftesnes - Visitnorway.com
Credits:  Finn Loftesnes - Visitnorway.com
Credits:  Finn Loftesnes - Visitnorway.com
Credits:  Finn Loftesnes - Visitnorway.com
ボルグルンド・スターブ教会の外部や内部から見られる、独特なノルウェー建築デザインのディテール

このように建築デザインやフォークアートの模様などに着目すると、アナ雪の作品をもう一度新たな目線で楽しむことができます。いつか、実際の世界観を体験しに、ノルウェーを訪れてみたくなるかもしれませんね。

ローズマリングの写真に写っている生活用品は、全てオスロにある民族博物館で実際に見ることが可能です。

民族博物館(Norsk Folkemuseum/The Norwegian Museum of Cultural History)

HP http://www.norskfolkemuseum.no/en/
住所 Museumsv.10, Oslo
電話 +47 22 12 37 00

参考資料:
『The Art of Frozen』by by Charles Solomon  (Author), John Lasseter (Preface), Chris Buck (Foreword), Jennifer Lee (Foreword)
www.visitnorway.com
ノルウェー民族博物館内の展示資料/ Norsk Folkemuseum
Special thanks to Harald Hansen, Innovation Norway

TEXT : 鐙 麻樹 

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