デザイン

デザイナー

Finn Juhl(フィン・ユール)

70年たっても斬新、建築家フィン・ユールの自邸

コペンハーゲンを訪れる機会があったら、ぜひ足を伸ばしてほしいのが、郊外にあるオードルップゴー美術館。フランスやデンマークの印象派絵画のコレクター、ウィルヘルム・ハンセンが1918年に自宅を開放して、コレクションを見せたことから始まった個人美術館です。

ここが注目されるようになったのは、2005年にロンドン在住の女流建築家ザハ・ハディット設計の別館が加わったことからでした。そして、2008年に敷地内にあったデンマークの建築家フィン・ユールの自邸が寄贈され、「フィン・ユール・ハウス」として、一般公開がスタート。クラシックな白い建物の本館、アバンギャルドなザハの別館、シンプル・モダンなフィン・ユールハウスと、異なる3タイプの建物を見ようと、世界中の建築ファンが訪れるようになったのです。

今回ご紹介するのは、フィン・ユール・ハウス。1942年、彼が30歳の時に建てたもので、建物、家具、カトラリーに至るまでデザインし、自身が「総合芸術作品」と絶賛する渾身の作でした。室内の色使い、外光の取り入れ方、家具の配置など、当時は斬新でしたが、すこしずつとりいれる人が増え、デンマークのモダン・インテリアの主流になっていきました。

L字形の家の広さは約200平米、左にリビングと書斎、右にダイニング、キッチンとベッドルームがあります。玄関を開けると大きな窓の先には庭の芝生が見え、真っ白い壁は家具やアート、部分使いの青や緑などのウォールペイントが映えるように工夫されています。コーナーのベンチと観葉植物の置き方、大きな窓の位置など、私たちもインテリアの参考にしたいディテールです。

フィン・ユールが活躍した1940-50年代は、デンマークのモダンデザインが一斉に花開いた時代で、主流は「近代家具デザインの父」といわれたコール・クリントが推し進めていた、シンプルで機能的、量産可能な「みんなの家具」。でも、フィン・ユールが目指したのは、熟練した家具職人とのコラボによる「彫刻のような家具」でした。代表作の「チーフテンチェア(酋長の椅子)」、「FJ45」など、自邸には当時のオリジナルが並んでいるのにも感動します。

フィン・ユールはその頑固さゆえ、晩年は不遇だったそうですが、1990年代から再び注目されています。毎年、革新的な業績を残したデンマークのクリエイターに授与されるのが、「フィン・ユール・デザイン賞」。彼へのオマージュなのはいうまでもありません。

座面が浮いているように見える、職人技の椅子。 © onecollection
座面が浮いているように見える、職人技の椅子。 © onecollection
威風堂々として姿はまさに「酋長の椅子」 © onecollection
威風堂々として姿はまさに「酋長の椅子」 © onecollection
リビングの奥左のテーブル。お客様とカードゲームやお茶をした。 © onecollection
リビングの奥左のテーブル。お客様とカードゲームやお茶をした。 © onecollection
ベッドルーム脇のテーブルは、楽譜専門の出版社を経営していたパートナーが打ち合わせに使っていた。 © onecollection
ベッドルーム脇のテーブルは、楽譜専門の出版社を経営していたパートナーが打ち合わせに使っていた。 © onecollection
庭から家を見たところ。三角屋根の部分はリビング。 © onecollection
庭から家を見たところ。三角屋根の部分はリビング。 © onecollection
リビングの暖炉のあるコーナー。大きな窓から庭が見渡せる。 © onecollection
リビングの暖炉のあるコーナー。大きな窓から庭が見渡せる。 © onecollection
ベッドルームとダイニングの部分。木で窓を目かくし。 © onecollection
ベッドルームとダイニングの部分。木で窓を目かくし。 © onecollection
パートナーの肖像画を飾った、暖炉のコーナー。白いソファは“ポエット” © onecollection
パートナーの肖像画を飾った、暖炉のコーナー。白いソファは“ポエット” © onecollection
リビング横のワーキングデスク。 © onecollection
リビング横のワーキングデスク。 © onecollection
窓側から見たリビング。壁のアート、ラグ、小物類の色合わせが絶妙。 © onecollection
窓側から見たリビング。壁のアート、ラグ、小物類の色合わせが絶妙。 © onecollection
日本のデザインに敬意を表していたフィン・ユールの「ジャパン・ソファ」 © onecollection
日本のデザインに敬意を表していたフィン・ユールの「ジャパン・ソファ」 © onecollection
色が変わるとポエット・ソファの印象もモダンに。 © onecollection
色が変わるとポエット・ソファの印象もモダンに。 © onecollection
フィン・ユール。 © onecollection
フィン・ユール。 © onecollection

Finn Juhl House

HP http://ordrupgaard.dk/finn-juhls-hus/
住所 Kratvænget 15 Ordrupgaard Vilvordevej 110, Charlottenlund
電話 +45 3318 5656
開館時間 11:00〜16:45
休館日 月曜〜金(祭日は除く)
入場料 110DKK

フィン・ユール Finn Juhl

1912年フレデリクスベア生まれ。王立美大建築学科で学んだ後、ヴィルヘルム・ラオリッツェン建築事務所に勤務し、1945年に独立。建築から家具、プロダクトまで多くのプロジェクトにかかわった。1989年没。

参考文献:*Finn Juhl And His House by Per H. Hansen, Ordrupgaard / Strandberg Publishing 2014

TEXT : 冨田千恵子(北欧デザイン・ライター)

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