デザイン

デザイナー

Arne Jacobsen(アルネ・ヤコブセン)

建築家

デンマークの景観を一新させた究極のモダニスト建築家、ヤコブセン。

 「スワン」、「エッグ」、「ドロップ」、「アント」……。クイズのようですが、これに共通するものといえば、デンマークの巨匠建築家、アルネ・ヤコブセンが1950年代にデザインした椅子です。誕生から50年以上たちますが、デンマークデザインのシグネチャー・アイテムとして、いまも世界中で愛されています。

椅子ばかりが有名になっていますが、ヤコブセンは建築家。コペンハーゲン周辺には彼が設計した建物が多く残っており、海外からの建築ファンを魅了しています。特に有名なのは、コペンハーゲンの中心地、チボリ公園近くの地上22階の『ラディソン・ブルー・ロイヤルホテル』。完璧主義者のヤコブセンが建物だけでなく、家具や照明、カトラリー、ドアノブまで手がけた、世界最初のデザインホテルといわれています。
高さ約76mの四角い建物は、完成当時は「パンチカード」と表現した人もいたほど異彩を放ったシャープな外観ですが、ロビーに足を踏み入れると、白鳥のようなフォルムのスワンチェア、卵のようにコロンとしたエッグチェアが並び、圧倒されます。これこそ、外観の直線と家具の曲線とのコントラスト、ヤコブセンの計算した美しさなのです。残念ながら、当時の面影を残しているのはロビーと客室の606室のみですが、各国のヤコブセンファンはいうまでもなく、建築家やデザイナーなどの定宿になっています。

ヤコブセンはこの他にも、住宅、レストラン、市役所、銀行、学校など、多くのプロジェクトを手がけました。特に彼の自宅兼仕事場があったコペンハーゲン北のクランペンボーでは、集合住宅ベラヴィスタ、ベルビュー劇場などを外から見ることができます。一般公開されていませんが、自宅で蟻をヒントにした、アントチェアを愛用していた写真も残っています。

アントチェアといえば、発売されたのは1952年。ヤコブセンが製薬会社の社員食堂を設計した際にデザインしました。限られた空間に多くの人が集まるため、軽くてスタッキング可能の椅子が必要とされ、当時は難しかった成型合板の曲線をフリッツ・ハンセン社の技術者とともに追求しました。アントチェアの成功は、のちに「世界で一番売れた成型合板椅子」といわれる、セブンチェアに繋がりました。

デンマーク人にとって、どんな体型にも程よくフィットするヤコブセンの家具は定番ですが、その快適さは、世界中のデザイン家具ファンもすでに実感しているに違いありません。

今年復刻が決まった、ドロップチェア。写真提供:Fritz Hansen
今年復刻が決まった、ドロップチェア。写真提供:Fritz Hansen
ヤコブセンの自宅兼事務所で使われていたアントチェア。写真提供:Fritz Hansen
ヤコブセンの自宅兼事務所で使われていたアントチェア。写真提供:Fritz Hansen
アントチェア。写真提供:Fritz Hansen
アントチェア。写真提供:Fritz Hansen
ヤコブセンのポートレート。当時はパイプや葉巻が流行。写真提供:Fritz Hansen
ヤコブセンのポートレート。当時はパイプや葉巻が流行。写真提供:Fritz Hansen
ヤコブセン、606号室。写真提供:Fritz Hansen
ヤコブセン、606号室。写真提供:Fritz Hansen
606号室は、別名「ヤコブセン・スイート」。
606号室は、別名「ヤコブセン・スイート」。

Radisson Blu Royal Hotel

HP http://www.radissonblu.com/royalhotel-copenhagen
住所 Hammerichsgade 1, DK-1611 Copenhagen
電話 +45 3342 6000

アルネ・ヤコブセン Arne Jacobsen

1902年コペンハーゲンの裕福な商人の家に生まれる。王立美大の建築学科で「近代家具デザインの父」といわれるコール・クリントに師事。1929年に自身の建築事務所を立ち上げ、多くの建築プロジェクトに関わった。1971年没。

参考文献:*Arne Jacobsen by Carsten Thau og Kjeld Vindum, Arkitektens Forlag (1998)

TEXT : 冨田千恵子(北欧デザイン・ライター)

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