コラム&インタビュー

現地インタビュー

デンマーク人と日本人の若手建築家が設立したクリエイティブ・ラボラトリー「KATO x Victoria」

デンマークのコペンハーゲンを拠点に活動するKATO x Victoriaは日本人建築家の加藤比呂史さんとデンマーク人建築家のヴィクトリア・ディーマーさんが2011年に共同設立したクリエイティブ・ラボラトリー。国内外の建築コンペで数々の賞を受賞し、デンマークのメディアでも取り上げられているホットな2人にインタビューをしてきました!

まずKATO x Victoriaがデンマークで注目を浴びている背景を教えていただけますか?

ヴィクトリア:実はKATO x Victoriaはデンマーク人と日本人が共同設立するということで、設立当初から沢山の人が関心をもってくれて、多くのサポートを受けることができました。デンマーク人にとって日本の建築は興味深いけれど、日本と直接コンタクトを取ることは難しいものです。そこで私たちには日本とデンマークをつなぐアンバサダーのような役割も期待されているんです。

加藤:メディアで大きく取り上げられたのは、デンマーク建築センターDACと国営放送DRが共同開催した”BYG DET OP”という企画です。建築家が市民と一緒にテンポラリーで公共建築をつくりあげるという企画で、僕らは建築家として選出され、スランガロップ(Slangerup)という地域の学校の遊び場づくりをしました。12~16歳の子ども達と議論しながらプランを立てて、実際に遊び場を建設するまでのプロセスがテレビで放映されたんです。

撮影:Rasmus Hjortshøj
撮影:Rasmus Hjortshøj
撮影:Rasmus Hjortshøj

今はどんな活動をしているのですか?

加藤・ヴィクトリア:建築の知識・スキル・経験を活かして、建築、景観設計、都市計画、プロダクトデザイン、インテリアデザインなど大小さまざまなスケールの作品づくりに取り組んでいます。最近はキーホルダー、ジュエリーデザイン、ジュエリーボックスのデザインなどもしていて、近々商品が発売される予定です。あと、ヴィクトリアはデンマークの建築系テレビ番組”Danskernes bolig”のホストも務めています。

2人にとって理想の建築とは?

加藤:建築家不在でつくられた建築ですかね(笑)。

ヴィクトリア: 言い換えれば、みんなで考えてみんなでつくる建築です。

加藤:僕らにとって理想の建築の1つはアフリカのマリ共和国にある泥のモスクのような建築です。乾燥化が進んでいて放っておけば崩れてしまうモスクは、市民の想いによって維持されています。このモスクのように、そこにある空気やそこにいる人たちの想いを「ぎゅっ」と凝縮させたような建築をつくりたいです。

今後はどんなことに挑戦していきたいですか?

加藤:基本的には日々気がついたアイデアをどんどん実現していくというのが、今後もやっていきたいことですね。
一つは、コペンハーゲンの屋根を新たな地面みたいにして、街をつくっていくこと。この街は区画割りされた建物の高さが揃っているので、屋根裏から見える景色がとても綺麗なんです。でも屋根裏の大半は倉庫として使われているのが現状で、常々もったいないなと感じています。個人的にはそこに銭湯とかサウナとか、地上の街よりも少しだけ特別な街が広がっていたら楽しくなるだろうな、とイメージしています(笑)。

加藤:一方日本では、たとえば…… 道とか? 東京の特に下町なんかを歩いていて強く印象に残るのは変に整理されすぎていない道の風景です。都市計画というと大げさなのですが、なんかそういう、なるべく壊されないでずっと残っていくものをつくりたいです。
あとは教育(?)みたいなことをやりたいです。たとえば、自分の街の遊び場を考えたときに、子どもや地域の人たちがどんなものを欲しがっているか聞いて、その人たちと一緒につくっていけたら楽しいと思うんです。住民の人たちも「あ、こんなことできるんだ!」って思うだろうし。
で、そのこと自体が子どもたちの自信につながって、子どもが色んなもののつくられ方に口出ししたり、疑問を抱き始めたら、日本の街ももっと良くなっていくような気がしています。

ヴィクトリア:私は最近学校のプロジェクトにフォーカスしていて、学校の改修、遊び場づくり、建築の授業など、学校や教育に関する色々なワークショップをしています。私は建築を通じて社会の一部として役割を担っていきたいんです。
あと、デンマークの建築業界にはアカデミックな雰囲気があります。デンマークの建築家は医者に喩えれば大学病院にいる医者のようなイメージですが、私は「村医者」でありたいんです。解決策を提示するのではなく、市民と話し合いながら、その人自身がもっているいいアイデアを拾い上げるような建築家になりたいです。

加藤さん、建築に関してデンマークと日本の共通点・相違点は何ですか?

加藤:共通点は「小さい」とか「暗い」ということに意外とポジティブなところです。あえて小さなところにみんなで集ったり、大切なゲストを小さな部屋に招く文化や美学は共通する点だと思います。そういう意味で、日本のお茶室とデンマークのコロニーガーデンハウス(夏に庭を楽しむための小屋)はちょっと似ていますね。
相違点は「シェア」に対する考え方です。日本人は「シェアする=誰のものでもない」と考えるけれど、デンマーク人は「シェアする=みんなのものであり自分のものでもある」と考えます。そこは基本的に違う点ですね。僕は仕事をするときにデンマーク的なシェアという概念を取り入れるようにしています。

加藤さん、建築に関してデンマークの魅力は何ですか?

加藤:デンマークには建物をリノベーションする文化があります。デンマークのように価値をそこに足していくという作り方はとても健康的だなと思います。最終的に壊す決断をする前に、何を取捨選択すべきかを1度考えるというプロセスは重要だと思います。日本では家を建てることが「ゼロから家を建てる」という発想だけになりがちで、そこはちょっともったいない気がします。

KATO x Victoria

http://katoxvictoria.dk/

TEXT : 針貝有佳

BACK NUMBER