コラム&インタビュー

現地インタビュー

ヘルシンキで人気デザイン雑貨店を営む夫妻

ヘルシンキの雰囲気ある路地でひっそりと営まれるデザイン雑貨店『common(コモン)』は、フィンランドに魅せられて日本から渡ってきた中村夫妻が開業したユニークなお店です。

日本人が北欧デザインに惹かれるなら、きっとフィンランド人も日本生まれのデザインの魅力を共有してくれるに違いない。そう考えたお二人は、フィンランド人たちの日常生活に馴染みそうな日本のデザイン雑貨を厳選セレクトし、店頭に並べることに。思ったとおりフィンランド人顧客からの反応は良く、まさにコモンを出会いの場として、いま着実に日本発のデザインがフィンランドの日常にも浸透中なのです!

そんな日フィン双方のデザインセンスや流行に誰よりも敏感な中村ご夫妻に、「フィンランド人の暮らしとデザイン」に関して日々抱いているイメージや思いを、たっぷりと語っていただきました。

日本では、北欧デザインといえば誰もがまず「シンプル」というキーワードを連想すると思いますが、実際のところフィンランドのデザインを一言で表すとしたら?

「バランス感覚」でしょうか。フィンランド人は、デザイナーも一般市民も、日常生活で使い込むモノには「実用性(使い勝手や耐久性など)」と「ビジュアル(魅力的で飽きの来ないプロポーション)」の両方が不可欠だと信じていて、実際にその両要素を調和させるセンスが秀でていると日々感じています。

例えば彼らは、「ムカヴァ(mukava/心地よい)」という単語を、身の回りのモノにたいしても使います。それは、フィンランド人がモノのデザインの善し悪しをビジュアルだけでなく、常に五感で判断しようとしている証ではないでしょうか。だから、フィンランドから生まれるデザインのひとつひとつには、ビジュアルと機能性の両方の美しさがグッドバランスで宿っていますよね。

さらに彼らの生活空間では、さまざまな年代や素材のデザイン同士が、これまた絶妙なバランス感覚で調和的に配置されているのにいつも驚かされます。モノとモノの組み合わせ方がとっても上手。ユーザーである一般市民も、年代や性別、趣向に関係なく、自分らしくて心地よい空間づくりへの意識とスキルがとても高いのです。

common(コモン)店内

ところでフィンランドのお宅って、どこもどうしてあんなにモノが少なくて美しく見えるのでしょうか?

日本では「断捨離」が流行っているようですが、そもそもフィンランド人は、新しいモノを買う段階でとても慎重になる傾向があると思います。おそらく日本よりもストレスフリーな国だし(笑)、衝動買いが珍しいというか。

家具にせよ食器にせよ、新しいモノを買うときには、本当にそれが必要か、他のデザインとの相性はどうか、あの部屋のあそこに置いたらどんな雰囲気になるか…… そういうことをじっくり検討する思考力が備わっている気がします。その能力は、考えることに重きを置いたフィンランドの教育や、長らく慎ましい生活を余儀なくされてきた歴史に源流があるのかもしれません。だから家には、厳選された、タイムレスで本当に必要なものだけが並んでいるのだと思います。

common(コモン)店内

フィンランド人は、リサイクル品に対する抵抗感も少ないですよね。

確かに、フィンランド人は要らなくなったものを捨てる前に、まずリサイクルの可能性を考えます。年に一度フリマに出店するのを恒例行事にしておいて、普段から不要になったものを倉庫で丁寧に保存しておく家庭もあるようです。

そして、街の至るところにある蚤の市やフリマで良いモノに出会ったら、それが以前誰かに使われていたという事実はまったく気にしないで、むしろ積極的に取り入れます。だって安いし、エコだし、悪いことなしでしょ? と言わんばかりに。まぁさすがに下着まで並んでいるのには驚きを隠せませんが(笑)使っていないアイテムや素材から、自分の手とアイデアで全く新しいモノをセンス良く作り出すスキルも高いですね。

common(コモン)店内

日本人に、今後もっとフィンランドのデザインシーンから刺激を受けて欲しいと思うポイントはありますか?

ずばり照明デザインへの関心度です。先日参加したデザイン博覧会で出展したアイテムのなかで、断トツに現地の人びとの反応が集まったのは、実は和紙素材で作られたランプシェードだったんです。日本にはこんなに美しく光を透過させるデザインがあるなんて!と、たくさんの方が感嘆の声を漏らしていました。

フィンランド人は、室内での光の取り入れ方や見せ方に対してとても敏感です。冬場は一日中ほの暗いにも関わらず、一般家庭の室内では煌々と光る蛍光灯はまず使いません。その代わりに、白熱灯の柔らかい光を美しく拡散させるランプシェード選びにこだわって、さらにキャンドルを炊いたり暖炉に火をつけたりして、さまざまな種類やデザインの明かりを部屋のあちこちに揺らめかせます。

私たちは、日本人にもぜひ、かつてのぼんぼりや提灯に端を発する「明かりの文化」をもっと大切に発展させていって欲しいと思っています。もちろん部屋は明るいに越したことはありませんが、室内の照明は、意識することでもっと生活空間を豊かにアレンジしてくれる、とても可能性を秘めたデザインアイテムではないでしょうか。

common(コモン)

common(コモン)
HP http://www.common-helsinki.com/
住所 Laivurinrinne 1, 00120 Helsinki, Finland
アクセス トラム3「Viiskulma」下車徒歩2分
電話 +358 9 670 385
営業時間 月~金曜11:00~18:00、土曜11:00~16:00
定休日 日曜(夏季・クリスマス期に不定休あり)

TEXT : こばやしあやな

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